歯を抜かない治療・意図的再植法(口腔外歯根端切除逆根充)6
2018.08.05
院長の大倉です。
今回は、上顎大臼歯の根尖性歯周炎から上顎洞炎を併発したケースを、一度は歯を抜歯して口腔外で処置を行いまた元に戻して治す(再植法)治療法です。
術前のレントゲン写真です。
上顎洞底線が矢印のところで隆起しています。
CT画像です。
根周囲の骨吸収が著明で上顎洞底がドーム状に隆起してさらに上顎洞粘膜も炎症を起こし肥厚しています。
正面からのCT画像です。
頬側骨の吸収が明らかです。
意図的再植法を行いました。
まず、原因歯を抜歯します。
歯の周囲の炎症性肉芽組織を除去し、抜歯窩の肉芽も掻爬します。
歯根端切除を行い逆根充しました。
この歯を元に戻します(再植)。
術前から術後のレントゲン写真です。
矢印の上顎洞底の骨膨隆が徐々になくなって行くことが観察されます。
術前術後のCT画像です。
術前にあった骨吸収と上顎洞炎は、術後認めれず、正常な骨組織で治癒しております。
CT画像の正面からも骨の再生が認められます。
このように歯を抜かない根管治療では病状を改善出来ないと予想される場合、一度、歯を抜いて取り出し、口腔外で根管治療さらには炎症性肉芽組織の掻爬することで、病状を一気に改善し歯も保存可能でした。
このような治療ケースは、全てのケースに適応できるものではなく、術前の検査、診断からこの意図的再植法の適応と判断される場合に行われます。
歯を抜かない治療・意図的再植法(口腔外歯根端切除逆根充)5
2018.07.20
院長の大倉です。
今回のケースは、上顎臼歯部の根尖性歯周炎から歯性上顎洞炎を惹起したケースです。
過去に根管治療後にクラウンを被せていましたが、咬合時の違和感が続き、今回、CT検査から上記の診断となりました。
CT画像です。
矢印のところに上顎洞炎による粘膜肥厚が見られます。
さらに根尖性歯周炎による上顎洞底の骨の膨隆と一部骨破壊が見られ炎症が上顎洞に波及しています。
口腔内の状態です。
原因歯をを抜歯します。
根尖部に不良肉芽組織が付着しています。
不良肉芽組織を除去し、歯根の状態を観察すると、歯根破折を確認しました。
汚染物質を除去し、接着剤にて破折片を繋ぎ合わせて元の状態に復元しました。
根尖部は、歯根端切除を行い逆根充も併用しました。
歯を元の位置に戻し固定します。
術前術後のCT画像の比較です。
術後のCT画像の矢印のところ見ると、上顎洞粘膜の肥厚は消失し、根尖部の骨破壊・骨吸収は骨が再生して治癒しています。
この治療法は、従来の根管治療のみでは病状の治癒を期待出来ず、抜歯を余儀無く選択される場合に、歯を保存して治癒に持ち込む治療法です。
ただし、全てのケースに適応されるわけではなく、術前の検査・診察により病状を診断し、この治療法の適応があるかないを判断しておりますます。
当然、原因歯を抜歯することが必要と判断されることもあります。
抜かない治療 歯根破折 (VRF:Vertical Root Fracture)・口腔外接着再植法34
2017.12.08
院長の大倉です。
今回は、根管治療を継続しても歯肉の 炎症が繰り返されるため、原因の精査ならびに治療を目的に来院されました。
口腔内の状態です。
左上小臼歯の根尖付近の歯肉の腫れと発赤を認めます。
根管治療を行っても炎症が消退しませんでした。
レントゲン写真から歯根周囲に透過像を認めます。また、CT検査から歯根の側壁に炎症所見が見られ、意図的に抜歯を行い原因の除去と再植を行うことになりました。(意図的再植法)
抜歯を行います。
正面像です。
側面像です。
側面に黒色に変色した部分が見られます。恐らくこの部分が根管内治療では治しきれなかったところと思われます。
病変部分を除去し洗浄します。
接着剤にて封鎖します。
再植します。
根管内も接着剤で封鎖しファイバーポストを植立します。
根尖も封鎖します。
再植します。
固定します。
術後のレントゲン写真です。
固定後、1か月、根尖部に違和感と腫脹を自覚しました。
レントゲン写真から根尖部に透過像を認め、臨床所見から根尖部に炎症の残存を確認し、完治目的に歯根端切除を含めた外科処置を行うこととしました。
歯肉を剥離します。
頬側面の骨欠損を認め、さらに歯根は垂直的に歯根破折を認めました。
根尖を含め根表面を一層削除します。
破折部に接着剤を流し込み固定します。
再度、歯肉弁を戻し縫合します。
術後、約3ヵ月経過し歯肉の状態は炎症所見がなく経過良好でした。
術直後のレントゲン写真です。
術後6ヵ月のレントゲン写真です。根尖部に認められた透過像は消失し骨の再生を認めました。
意図的再植時には歯根破折を確認することはできませんでした。
しかし、今回のケースの様に1回目の治療で症状が軽快しない場合、何らかの炎症の原因が残存していることがあり、再度原因精査と加療が必要となることがあります。
抜かない治療・意図的再植法(口腔外歯根端切除逆根充)
2017.07.08
院長の大倉です。
今回は、根尖性歯周炎を起こした大臼歯に対して歯内療法を行い、しばらく経過観察していた歯が再度、噛むと違和感を感じて、歯肉に膿の出る出口が出来てしまったケースです。
口腔内の状態です。
銀歯の横に赤くニキビのような出来物が出来ています。
根尖性歯周炎の治療を行う前のレントゲン写真です。
近心根の根管充填が十分に行われていませんでした。
当院で歯内療法を行った後のレントゲン写真です。
近心根の根管治療を行いました。
完全ではありませんが、可及的に根管充填しました。
その後、経過観察中に歯肉に出来物いわゆる瘻孔が形成され排膿が始まりました。
今回、再度根管治療を行っても再発の原因が解決されない可能性が強く、一度、口腔外に歯を取り出して原因を見極めて治療する「意図的再植法」を行うことになりました。
抜歯された状態です。
歯根側面に炎症性肉芽組織が見られます。
炎症性肉芽組織を除去したところ、根面に穿孔が認められました。
今回は、スーパーボンドにて穿孔部を閉鎖しました。
抜歯された部位です。
処理された歯を元に戻します。
前の歯としっかり固定します。
術後のレントゲン写真です。
逆根充の状態が観察されます。
術後6ヵ月のレントゲン写真と口腔内の状態です。
歯肉の出来物は消失し、極端に硬いものでなければ違和感なく噛むことができました。
今回の根管穿孔のケースでは根管内からの治療では治癒が困難であり、「意図的再植法」により歯の保存が可能となります。
抜かない治療・意図的再植6
2017.06.25
院長の大倉です。
今回は、84歳の方です。
ブリッジの支台歯がトラブルとなり、このままでは抜歯して取り外しの義歯となるケースですが、患者さんのご希望があり、歯を抜かないで残して問題を解決する方法を検討しました。
術前のレントゲン検査から歯根の側面に穴が開いていてそこが感染源となって炎症を生じていました。
レントゲン写真から5番の歯の後の骨が吸収しているのが分かります。
今回は原因の精査と歯を極力残すために「意図的再植法」を選択しました。
ブリッジを外しました。
5番の歯を一度抜歯します。
超音波にて原因物の除去を行います。
再植して仮歯のブリッジで固定しました。
術直後のレントゲン写真です。
再植状態を確認しました。
術後4ヶ月目のレントゲン写真です。
骨の再生が一部に見られ、歯の動揺もな句なり、再度ブリッジを入れました。
このように80歳を過ぎても、骨の再生が見られ、再度ブリッジを入れて食事が出来る様になり、QOLを維持する結果となりました。
さらに今後は、口腔ケアを通じて炎症の再発を防いで行くことが大切です。
歯根嚢胞・意図的再植5
2017.04.01
院長の大倉です。
今回は、上顎臼歯部の歯根嚢胞のケースです。
CT画像から20mm大の嚢胞と上顎洞炎を認めます。
銀歯の歯が原因歯です。
抜歯しました。
根尖に肉芽組織を認めます。
根尖に付着した肉芽組織を除去し確認しました。
根管の閉鎖が十分ではありませんでした。
歯根端切除し根管内を洗浄しました。
再植直後の歯の状態です。
術後1年のCT画像です。
嚢胞があった所は骨で再生し、上顎洞炎も軽快し治癒しています。
上顎臼歯部の大きな歯根嚢胞の場合、上顎洞炎を併発しているケースが多く、治療法は原因歯の抜歯と嚢胞摘出が一般的ですが、これでは病気が治癒しても歯を失うことになります。
これからの医療は、歯を残せる可能性があれば、積極的に歯を保存して咀嚼機能を維持出来る方法を検討することが大切と考えます。
ただし、しっかり経過観察を行い適応症となる条件を見極めることが必要です。
口腔外接着再植法25
2017.01.02
明けましておめでとうございます。
院長の大倉です。
今回は、上顎前歯の歯根破折です。
差し歯のトラブルに根尖部の腫れや差し歯のぐらつきがよく見られます。
原因として、差し歯が取れかかっている場合と歯根破折によるぐらつきがあります。
口腔内写真です。
右上前歯の根尖部の歯肉に白く膿を伴って腫れています。
差し歯のぐらつきも自覚され、口臭もありました。
レントゲン写真です。
根尖付近に透過像を認め、差し歯のぐらつきから歯の中に細菌が浸入し根尖部に炎症が生じて骨が吸収していると推察されます。
今回は、根尖病巣部の治療と差し歯のぐらつきを同時に改善する目的に「口腔外接着再植法」を行いました。
抜歯を行います。
抜歯と同時に歯根に病巣が付着して取れました。
差し歯と歯根との接合部にギャップありました。
差し歯を取り除くとファイバーが裂けてポストが折れていました。
歯根に付着した炎症性組織を取り除きます。
さらに、差し歯を調整しました。
スーパーボンドにより根尖部の閉鎖と差し歯の接着を行いました。
固定直後のレントゲン写真です。
術後4ヶ月のレントゲン写真です。
歯肉の炎症も改善し、差し歯のぐらつき・口臭も無くなりました。
このように根尖部の病巣の治療と差し歯のぐらつきを同時に解決出来る治療法として、「口腔外接着再植法」を行いました。
今後、長期に経過観察を行い、再度症状が再発した場合は、抜歯即時インプラント治療を行うことになると考えます。
口腔外歯根端切除逆根充法(意図的再植法)4
2016.08.29
院長の大倉です。
今回は、「意図的再植法」により通常では抜歯されてしまう歯を保存出来たケースです。
上顎の奥歯が疲れると鈍痛があり、奥歯の上の方に違和感をいつも感じていました。
CT画像から歯根の上方に膿が溜まる「嚢胞(のうほう)」という病気があることが分かりました。
CT画像です。
上顎洞粘膜が肥厚し、原因歯の根の骨がドーム状に膨れ上がっているのが観察されます。さらに、上顎洞炎も併発しています。
原因歯を抜歯します。
抜歯された歯は、根尖部の色が変化しています。
抜歯窩から摘出された歯根嚢胞です。
原因歯の根尖部の状態です。
その根尖部の根管口をMTAセメントにて封鎖します。
再植して固定します。
術後3ヶ月経過したCT画像です。
術前のCT画像に見られたドーム状の骨透過像は縮小しました。
このように歯内療法で改善しない上顎歯根嚢胞に対しては、「意図的再植法」を行うことで、病気を取り除き、歯を保存出来ることが出来る唯一の方法です。
大臼歯 歯根破折(VRF:Vertical Root Fracture)・口腔外接着再植法21
2016.08.18
院長の大倉です。
今回は、下顎大臼歯の垂直歯根破折のケースです。
垂直歯根破折は、その様式が様々であり、完全な破折、不完全な破折、根尖側破折などケースごとに異なります。
また、根管治療の予後にも影響を与えている場合もあります。
歯根破折に至る原因としては、根管治療の状態、残存歯質の状況と選択される支台歯築造の方法、補綴物の素材や咬合様式、咀嚼習慣、くいしばりなどの様々な要因が複合的に関係しています。
一度、歯根破折が生じると、歯周組織に於いて様々な生体反応が起こり、歯根膜や歯槽骨の消失により、歯の機能が維持出来なくなります。
歯根破折は、骨折とは異なり自然治癒しません。
歯根破折の生じた歯が抜歯される所以です。
骨折は、整復、固定を行うことで治癒します。
歯根破折も整復・固定が出来れば、再度本来の機能が果たせることが分かってきました。
この「口腔外接着再植法」は、一度歯を抜いて、口腔外で人工的に歯根破折を整復(元の形に戻す)・接着固定し、それを元の位置に戻す(再植)方法です。
一番奥の歯の歯肉に腫脹が見られます。
10年前に一番奥の歯の根管治療が必要となり、治療後金属の支台を入れて被せました。
レントゲン写真から一番奥の歯根に透過像が見らてます
抜歯された歯です。
根の先から歯根中央にかけてマイクロスコープにて亀裂が確認されました。
亀裂部分を形成します。
抜歯窩を掻爬して再植の準備します。
修復した歯を戻し再植します。
手前の歯と固定します。
術前のレントゲン写真です。
術後3ヶ月のレントゲン写真です。
術前に見られた歯根周囲の影が小さくなっています。
術後4ヶ月目です。歯根膜の再生が進んでいます。
術後5ヶ月のレントゲン写真です。
このように完全な歯根破折ではない歯根亀裂に対する診断・治療は困難な場合も多く、「意図的再植」による診断・治療を選択することになります。