抜かない治療 歯根破折 (VRF:Vertical Root Fracture)・口腔外接着再植法34
院長の大倉です。
今回は、根管治療を継続しても歯肉の 炎症が繰り返されるため、原因の精査ならびに治療を目的に来院されました。
口腔内の状態です。
左上小臼歯の根尖付近の歯肉の腫れと発赤を認めます。
根管治療を行っても炎症が消退しませんでした。
レントゲン写真から歯根周囲に透過像を認めます。また、CT検査から歯根の側壁に炎症所見が見られ、意図的に抜歯を行い原因の除去と再植を行うことになりました。(意図的再植法)
抜歯を行います。
正面像です。
側面像です。
側面に黒色に変色した部分が見られます。恐らくこの部分が根管内治療では治しきれなかったところと思われます。
病変部分を除去し洗浄します。
接着剤にて封鎖します。
再植します。
根管内も接着剤で封鎖しファイバーポストを植立します。
根尖も封鎖します。
再植します。
固定します。
術後のレントゲン写真です。
固定後、1か月、根尖部に違和感と腫脹を自覚しました。
レントゲン写真から根尖部に透過像を認め、臨床所見から根尖部に炎症の残存を確認し、完治目的に歯根端切除を含めた外科処置を行うこととしました。
歯肉を剥離します。
頬側面の骨欠損を認め、さらに歯根は垂直的に歯根破折を認めました。
根尖を含め根表面を一層削除します。
破折部に接着剤を流し込み固定します。
再度、歯肉弁を戻し縫合します。
術後、約3ヵ月経過し歯肉の状態は炎症所見がなく経過良好でした。
術直後のレントゲン写真です。
術後6ヵ月のレントゲン写真です。根尖部に認められた透過像は消失し骨の再生を認めました。
意図的再植時には歯根破折を確認することはできませんでした。
しかし、今回のケースの様に1回目の治療で症状が軽快しない場合、何らかの炎症の原因が残存していることがあり、再度原因精査と加療が必要となることがあります。