大臼歯 歯根破折(VRF:Vertical Root Fracture)・口腔外接着再植法21
院長の大倉です。
今回は、下顎大臼歯の垂直歯根破折のケースです。
垂直歯根破折は、その様式が様々であり、完全な破折、不完全な破折、根尖側破折などケースごとに異なります。
また、根管治療の予後にも影響を与えている場合もあります。
歯根破折に至る原因としては、根管治療の状態、残存歯質の状況と選択される支台歯築造の方法、補綴物の素材や咬合様式、咀嚼習慣、くいしばりなどの様々な要因が複合的に関係しています。
一度、歯根破折が生じると、歯周組織に於いて様々な生体反応が起こり、歯根膜や歯槽骨の消失により、歯の機能が維持出来なくなります。
歯根破折は、骨折とは異なり自然治癒しません。
歯根破折の生じた歯が抜歯される所以です。
骨折は、整復、固定を行うことで治癒します。
歯根破折も整復・固定が出来れば、再度本来の機能が果たせることが分かってきました。
この「口腔外接着再植法」は、一度歯を抜いて、口腔外で人工的に歯根破折を整復(元の形に戻す)・接着固定し、それを元の位置に戻す(再植)方法です。
一番奥の歯の歯肉に腫脹が見られます。
10年前に一番奥の歯の根管治療が必要となり、治療後金属の支台を入れて被せました。
レントゲン写真から一番奥の歯根に透過像が見らてます
抜歯された歯です。
根の先から歯根中央にかけてマイクロスコープにて亀裂が確認されました。
亀裂部分を形成します。
抜歯窩を掻爬して再植の準備します。
修復した歯を戻し再植します。
手前の歯と固定します。
術前のレントゲン写真です。
術後3ヶ月のレントゲン写真です。
術前に見られた歯根周囲の影が小さくなっています。
術後4ヶ月目です。歯根膜の再生が進んでいます。術後5ヶ月のレントゲン写真です。
このように完全な歯根破折ではない歯根亀裂に対する診断・治療は困難な場合も多く、「意図的再植」による診断・治療を選択することになります。