口腔外接着再植法25
2017.01.02
明けましておめでとうございます。
院長の大倉です。
今回は、上顎前歯の歯根破折です。
差し歯のトラブルに根尖部の腫れや差し歯のぐらつきがよく見られます。
原因として、差し歯が取れかかっている場合と歯根破折によるぐらつきがあります。
口腔内写真です。
右上前歯の根尖部の歯肉に白く膿を伴って腫れています。
差し歯のぐらつきも自覚され、口臭もありました。
レントゲン写真です。
根尖付近に透過像を認め、差し歯のぐらつきから歯の中に細菌が浸入し根尖部に炎症が生じて骨が吸収していると推察されます。
今回は、根尖病巣部の治療と差し歯のぐらつきを同時に改善する目的に「口腔外接着再植法」を行いました。
抜歯を行います。
抜歯と同時に歯根に病巣が付着して取れました。
差し歯と歯根との接合部にギャップありました。
差し歯を取り除くとファイバーが裂けてポストが折れていました。
歯根に付着した炎症性組織を取り除きます。
さらに、差し歯を調整しました。
スーパーボンドにより根尖部の閉鎖と差し歯の接着を行いました。
固定直後のレントゲン写真です。
術後4ヶ月のレントゲン写真です。
歯肉の炎症も改善し、差し歯のぐらつき・口臭も無くなりました。
このように根尖部の病巣の治療と差し歯のぐらつきを同時に解決出来る治療法として、「口腔外接着再植法」を行いました。
今後、長期に経過観察を行い、再度症状が再発した場合は、抜歯即時インプラント治療を行うことになると考えます。
歯根破折 (VRF:Vertical Root Fracture)・口腔外接着再植法24
2016.12.29
院長の大倉です。
今回は、70歳後半の方の歯根破折です。
8020を達成するためにも、今回、口腔外接着再植法を行いました。
ご高齢ですが、術後感染はなく骨の再生も見られ経過は良好です。
術前のレントゲン写真です。
歯根端切除を行なっていますが、根尖病巣が再発していました。
口腔内の写真です。
根尖部歯肉が腫れ排膿が見られました。
まず、抜歯を行います。
抜歯窩を十分に掻爬し炎症性組織を取り除きます。
抜歯した歯根です。単根で、根尖部は歯根端切除の影響で切除され短くなっていました。
汚染物を除去し、炎症性肉芽組織を取り除きます。
スーパーボンドによる根管充填とファイバーポストの植立を行います。
舌側は歯根破折を認めました。
3か月が経過し、補綴物を装着しました。
根尖部の炎症が消失し、咀嚼も問題ありません。
術後のレントゲン写真です。
骨再生も見られ経過良好です。
ご高齢の方でも、適切な施術により大切な歯を保存することが出来ることは、8020の達成と今後のQOLの向上に寄与すると考えます。
歯根破折 (VRF:Vertical Root Fracture)・口腔外接着再植法23
2016.11.26
院長の大倉です。
今回は、下顎小臼歯の垂直性歯根破折のケースです。
術前・術後をCTにて観察しました。
口腔内の状態です。
ほぼ、残根状態です。
一般的には、抜歯し他の方法で歯を作りますが、今回も口腔外接着再植法にて歯を再建し保存して機能させる事にします。
抜歯された歯根です。
二つに破折しており内部は細菌感染し、汚染され周囲には炎症性肉芽組織が付着しております。
歯根を接着できる様に洗浄し清掃します。
スーパーボンドにて歯を接着し元の歯根の状態に戻します。
口腔内に戻し再植し固定します。
1か月経過しました。
歯肉の状態も良好です。
支台の形にし、歯を被せる準備をします。
炎症もなく、歯のぐらつきも改善しています。
術前のCT画像です。
歯根の右側に骨吸収像を認めます。
術後のCT画像です。
骨の再生が確認出来ます。
このように本来抜歯になる歯を保存することが出来るこの治療法は、短期的な予後は良好です。ですが、長期的予後は明らかではありません。症例を重ね検討して行きます。
小臼歯 歯根破折(VRF:Vertical Root Fracture)・口腔外接着再植法22
2016.11.25
院長の大倉です。
今回は、下顎小臼歯の歯根破折に対して口腔外接着再植法を行いレントゲンにて骨再生を観察しました。
中央の白い歯が歯根破折を起こしています。
抜歯しました。
根尖から上方に歯根が破折しているのが分かります。
術前のレントゲン写真です。
歯根周囲に骨透過像が認められます。
歯根破折を接着し固定期間中です。
5か月目です。
透過像が消失し、骨の再生が進んでいます。
更に、経過観察を行って行きます。
大臼歯 歯根破折(VRF:Vertical Root Fracture)・口腔外接着再植法21
2016.08.18
院長の大倉です。
今回は、下顎大臼歯の垂直歯根破折のケースです。
垂直歯根破折は、その様式が様々であり、完全な破折、不完全な破折、根尖側破折などケースごとに異なります。
また、根管治療の予後にも影響を与えている場合もあります。
歯根破折に至る原因としては、根管治療の状態、残存歯質の状況と選択される支台歯築造の方法、補綴物の素材や咬合様式、咀嚼習慣、くいしばりなどの様々な要因が複合的に関係しています。
一度、歯根破折が生じると、歯周組織に於いて様々な生体反応が起こり、歯根膜や歯槽骨の消失により、歯の機能が維持出来なくなります。
歯根破折は、骨折とは異なり自然治癒しません。
歯根破折の生じた歯が抜歯される所以です。
骨折は、整復、固定を行うことで治癒します。
歯根破折も整復・固定が出来れば、再度本来の機能が果たせることが分かってきました。
この「口腔外接着再植法」は、一度歯を抜いて、口腔外で人工的に歯根破折を整復(元の形に戻す)・接着固定し、それを元の位置に戻す(再植)方法です。
一番奥の歯の歯肉に腫脹が見られます。
10年前に一番奥の歯の根管治療が必要となり、治療後金属の支台を入れて被せました。
レントゲン写真から一番奥の歯根に透過像が見らてます
抜歯された歯です。
根の先から歯根中央にかけてマイクロスコープにて亀裂が確認されました。
亀裂部分を形成します。
抜歯窩を掻爬して再植の準備します。
修復した歯を戻し再植します。
手前の歯と固定します。
術前のレントゲン写真です。
術後3ヶ月のレントゲン写真です。
術前に見られた歯根周囲の影が小さくなっています。
術後4ヶ月目です。歯根膜の再生が進んでいます。
術後5ヶ月のレントゲン写真です。
このように完全な歯根破折ではない歯根亀裂に対する診断・治療は困難な場合も多く、「意図的再植」による診断・治療を選択することになります。
口腔外接着再植法20
2016.07.24
院長の大倉です。
今回は、感染根管治療を行っても歯肉の腫脹を繰り返すケースです。
左下の歯肉に腫脹を自覚し時々破れて膿が出ることを繰り返すしています。
レントゲン写真です。
奥から二番目の歯の歯根周囲に影が認められます。
CT画像からも歯根の先から上方に骨吸収像を認めます。
臨床像とレントゲン写真から、慢性根尖性歯周炎と診断されましたが、今までの経験から歯根破折(亀裂)が生じている可能性があります。
治療法は、意図的再植による歯根亀裂の修復を考えました。
抜歯しました。
抜歯された歯です。
歯根周囲に炎症性肉芽組織が認められます。
炎症性肉芽組織を除去すると歯根に亀裂が認められました。
亀裂の拡大写真です。
茶色の細い線が亀裂です。
歯根の先に向って見られます。
亀裂部分には細菌による汚染物が進入しているため、超音波チップにて除去します。
亀裂部分に接着剤を流し込みます。
内側の亀裂部分も同じように処置します。
亀裂は歯根の先で連続しています。
準備ができたので、歯を元に戻します。
戻した歯を元に固定します。
術後のレントゲン写真です。
今回のように、完全に破折状態でなくても、臨床症状が繰り返す場合、慢性根尖生歯周炎の治療目的に意図的再植法により、口腔外接着再植法を併用することで、慢性炎症を取り除き、症状のない嚙める歯を取り戻すことが出来ます。
小臼歯 垂直歯根破折(VRF:Vertical Root Fracture)・口腔外接着再植法19
2016.07.19
院長の大倉です。
今回は、下顎の小臼歯の垂直歯根破折に対して、口腔外接着再植法を行い術後約8ヶ月経過観察しているケースです。
術前の状態です。
頬側歯肉に軽度の腫脹と咬合痛があります。
レントゲン写真です。
歯根周囲に骨吸収像を認めます。
深い歯周ポケットの形成もあり、垂直歯根破折(VRF:Vertical Root Fracture)と診断されました。
垂直歯根破折(VRF:Vertical Root Fracture)と診断された歯に対する治療法として、当院では「口腔外接着再植法」を適応することで、多くの歯根破折を保存することが出来ております。
今回も「口腔外接着再植法」を適応し行いました。
まず、抜歯を行います。
抜歯窩の炎症性肉芽組織を掻爬します。
抜歯された歯です。根の先から中央にかけて破折線が認められます。
破折線に沿って開きます。
汚染物質を除去しました。
接着剤にて歯をもとの形に接着修復しました。
そして、元の場所に再植しました。
術直後のレントゲン写真です。
術後約4ヶ月のレントゲン写真です。
まだ、少し歯根周囲に黒い像が認められます。
術後、4ヶ月を過ぎると違和感なく自然に噛むことが出来ます。
術後約8ヶ月のレントゲン写真です。
この様に、抜歯と判断されることの多い垂直歯根の歯を「口腔外接着再植法」を適応すことで抜歯を回避し保存することができます。
さらに、長期に渡り経過観察を行います。
垂直歯根破折・口腔外接着再植法18
2016.06.29
院長の大倉です。
今回は、上顎小臼歯の歯根破折のケースです。
昨年から食事の際に違和感を感じ、最近では食事の際に痛むため、反対側でしか噛むことが出来ない状態です。
口腔内写真です。
右から二番目の歯が歯根破折と根尖性歯周炎を起こしております。
中央の歯に太い金属コアとメタルボンドセラミッククラウンが装着されております。
根は、上顎洞に突出し洞粘膜の炎症所見である影を認めます。
今回、口腔外接着再植法により問題点を解決します。
まず、抜歯を行います。
被せ物とコアが外れました。
さらに、歯根は三分割され抜歯されました。
汚染が進み、歯根周囲に炎症性肉芽が付着していました。
まず、専用の器械で除染します。
歯根膜を傷害しないように汚染部分のみを丁寧に処置し本来の歯の状態に戻します。
元の歯の状態に戻るか、一度接着の前に歯の形にします。
特に三分割されているので、再現性は重要です。
ファイバーポストを1本使用して接着剤にて歯根を元の状態に再現しました。
抜歯されたところを十分に掻爬した後に接着した歯根を元の位置に戻します。
2ヶ月後、支台を調整し仮の歯を入れて様子を診て行きます。
術後、約3ヶ月を過ぎると噛めるようになってきます。
最後に今回はオールセラミッククラウンを被せました。
術直後のレントゲン写真です。
術後2ヶ月のレントゲン写真です。
歯根周囲に骨の再生が認められます。
上顎洞の炎症も消退してきております。
術6ヶ月のレントゲン写真です。
さらに歯根周囲に骨の再生が認められます。
歯根膜腔もはっきりわかります。
上顎洞の炎症は認められなくなりました。
このように、まだ短期的な経過観察ですが、本来の歯の形態と機能を取り戻すことが出来ました。
これからさらに長期的に観察を続けます。
前歯歯根破折・口腔外接着再植法17
2016.04.29
院長の大倉です。
今回は、前歯の歯根破折に対して口腔外接着再植法を行いました。
前歯の2本が歯根破折の疑いと根尖部の病巣から歯肉の腫れを繰り返していました。
レントゲンです。
抜歯された歯です。
2本とも破折が原因で歯が変色し、汚染が進んでいました。
丁寧に変色と感染した組織を取り除きます。
ファイバーポストを挿入して、接着材にて元の歯の状態に戻します。
病巣を十分に搔爬した後に歯を元の位置に再植します。
口腔内に戻した状態です。
白いところは接着材です。
仮歯を装着して歯の裏から固定します。
1ヶ月後に固定を外しました。
仮歯を除去したところ、歯肉の炎症は改善し良好な状態です。
最終的な被せ物を入れました。
術直後のレントゲン写真です。
術後3ヶ月のレントゲン写真です。
根尖部の影は消え、歯槽骨の治癒も良好です。
この様に、抜歯と言われるケースでも保存的に歯を残す治療が可能です。
歯根破折・口腔外接着再植法16
2016.04.17
院長の大倉です。
今回は、前歯の歯根破折のケースです。
抜歯即時インプラントの適応ですが、ご自身の歯を残す治療法を強く希望されたため、口腔外接着再植法を行いました。
レントゲン写真です。
歯の中央部分に破折を認めます。
左上の前歯の歯肉に炎症が認められ、歯の動揺もありました。
破折しているため、歯冠部と歯根が分離されて抜歯されました。
根管内に金属ポストが認められます。
接着するために、根管内の金属ポストを除去し、炎症性肉芽組織も取り除きました。
ファイバーポストを新たに根管内に挿入し、スーパーボンドにて接着しました。
再植前には、十分に抜歯窩を搔爬 します。
再植した状態です。
もとの位置に固定します。
再植直後のレントゲン写真です。
歯根破折の状態、歯槽骨の吸収、炎症の程度など、条件によっては口腔外接着再植法を行うことが出来ますが、咬合状態や歯軋りなどに注意して経過観察を行う必要があります。